日韓両国の首脳は、1月13日の首脳会談で、山口県宇部市で起きた「長生(ちょうせい)炭鉱」水没事故の犠牲者の身元確認を目的に、遺骨のDNA鑑定を両国が協力して行うことで合意した。昨年11月の日韓司教交流会を契機として日韓の司教団がそれぞれ寄付することを決めた(関連記事は、こちら)、同事故犠牲者の遺骨収集事業を行う市民団体は、両首脳の合意を歓迎。遺族への遺骨返還実現に向けて前進していると、1月20日、政府関係者との面会後に開いた記者会見で語った。
日韓の司教団が支援するのは、太平洋戦争中の1942(昭和17)年、長生炭鉱の水没事故で犠牲となった朝鮮人労働者136人を含む全183人の遺骨を収容し、遺族に返還することを目的に活動している「長生炭鉱の水非常(みずひじょう)を歴史に刻む会」(以下、「刻む会」)。「水非常」とは、炭鉱用語で水没事故を指す。
この日、同会が政府との面会で目的としていたのは、DNA鑑定を誰の責任で行い、時間的にどのようなめどで犠牲者と遺族のDNAの照合が進むのか、また合意の中身を確認することだった。
警察庁関係者は、鑑定のスケジュールは決まっていないが、日韓で協議を進めていること、また今後、新たな遺骨が収容されることも踏まえ、「そう遠くない時期に(鑑定は)できると思う」などと回答した。
外務省からは、DNA鑑定に関する刻む会との情報共有について、韓国側との協議の中身について明確になるまで言及できないなどとする回答があった。
同会事務局長の上田慶司さんは、政府側からの回答は満足の行くものではなかったとしながらも、初めて前向きな姿勢が見られたと評価。前回の記者会見では、高齢化が進む遺族に「一刻も早く遺骨をお返しするために」刻む会独自での鑑定に踏み切る可能性も示していたが、日韓首脳の合意を信じ、撤回すると表明した。
また、北朝鮮で昨年、犠牲者遺族を取材した記者が会見会場で行った報告を受け、上田さんは北朝鮮の遺族を「置き去りにすることなく」、遺骨返還を全ての遺族と共に、よりスピード感を持って進めていく意向を示した。
同会代表の井上洋子さんは、犠牲者の遺骨が事態を前に進めてくれたと、喜びも表現した。
2月3日から同月11日まで、海外から迎えたダイバーにより遺骨の集中捜索が行われる。刻む会では、これまでの潜水調査で確認されている遺骨4体のうち、今回の捜索初日に頭蓋骨2体、残りの日程で4体の遺骨を全て収容できる見込みという。

続く坑口(こうぐち/写真中央)について、
日韓司教交流会の参加者に説明する井上洋子さん
(中央左から2人目/25年11月17日)

1942年2月3日午前6時頃、海岸の坑口から
沖合約1kmの坑道で異常出水が始まり、午前8時頃
に水没した。犠牲者の遺骨は今も海底に残されている
