日本カトリック常任司教委員会は、山口県宇部市の「長生(ちょうせい)炭鉱」で1942(昭和17)年に起きた水没事故犠牲者の遺骨収集事業を行っている団体に対し、寄付を行うことを12月4日、決定した。事業を行っているのは「長生炭鉱の水非常を歴史に刻む会」(以下「刻む会」)。「水非常」とは炭鉱用語で水没事故を指す。
「刻む会」のウェブサイトによれば、長生炭鉱は32(昭和7)年から本格的に操業を始めた。海底に坑道がある危険な炭鉱で、朝鮮人労働者の数がずば抜けて多く、「朝鮮炭鉱」と呼ばれていたという。事故当日、午前6時ごろに異常出水が始まり、午前8時ごろ水没する大惨事が起きた。犠牲者は183人。そのうち136人が朝鮮人労働者だった。事故の詳細は長い間、市民に知らされなかったが、91年に住民らが事実を受け止め歴史に刻もうと、「刻む会」を結成。海中の坑道から海面に突き出した二つの排気口(ピーヤ)を遺構として保存する取り組みのほか、証言や資料の収集・編さんなどを進めてきた。
今年11月に行われた第27回日韓司教交流会の前日、日韓の司教有志が長正炭鉱を訪れ、犠牲者全員の名前を刻んだ追悼碑の前で共に祈りをささげた。また韓国の司教団は、交流会の中で日韓両国の犠牲者の遺骨収集を支援すると発表し、日本の司教団にも協力を求めていた(関連記事はこちら) 。
今回、日本の司教団として、「長生炭鉱の痛ましい歴史を記憶に刻み、犠牲者の尊厳を回復するための遺骨収集事業を行っている『長生炭鉱の水非常を歴史に刻む会』に、日本の司教団の連帯のしるしとして」寄付を行うと決定した。

祈りをささげる司教たち。この後、1人ずつ海に献花した
