教皇フランシスコ 退院しバチカンに戻る 信者たちにあいさつ後

【ローマ3月23日CNS】教皇フランシスコは3月23日、5週間以上も入院していたローマ市内のジェメッリ総合病院から退院する直前に、同病院前に集まった数百人の人々にあいさつした。教皇は呼吸困難と両肺の肺炎、複数の感染症の治療を受けていた。
 教皇は非常に弱々しい声で人々に感謝の気持ちを伝え、手を振ったり、親指を立てたりして歓声に応えた。
 さらに、黄色い包みの花束を掲げる女性を指差して、人々に「彼女は良い人ですね」と語りかけた。
 側近が車いすに乗った教皇フランシスコを、病院前の広場を見下ろすバルコニーまで押した。病院前には、ローマのロベルト・グアルティエリ市長を含む約600人が集まっていた。バチカンのサンピエトロ広場にも、2月14日から入院していた教皇が初めて姿を現すのを見ようと、ビデオスクリーンの前に数百人が集まった。
 教皇フランシスコはバルコニーに現れた後、すぐに同病院から退院した。
 バイクに乗った警察官が先導する教皇の車列は、直接バチカンには向かわず、教皇が国外訪問の前後や入院前後に立ち寄って祈っていたローマ中央部の聖マリア大聖堂の前で停止した。
 教皇フランシスコは大聖堂内には入らず、大聖堂内の聖母子のイコン「ローマ市民の救い」下の祭壇に手向ける花束を残した。
 テレビ中継の画像に映った教皇は、白いフィアットの小型車の助手席に座り、鼻腔カニューレ(挿管)を通した酸素吸入を受けていた。教皇の車列は、バチカンで教皇が宿舎にしている「聖マルタの家」の前に教皇を送り届けた。

 神の愛に根差す 忍耐が人生に必要

 バチカンは、88歳の教皇がジェメッリ総合病院のバルコニーに姿を現す直前に、「お告げの祈り」に当たっての教皇のメッセージを公表した。
 教皇のメッセージは、当日の福音箇所(ルカ13・1〜9)で、実のならないいちじくの木を切り倒せと命じるぶどう園の主人に、あと1年世話をするから待ってほしいと答えた園丁の物語に触れる。
 「この辛抱強い園丁は主です。わたしたちの人生の土地を思いやりで耕して、主に立ち帰るのを信じて待ってくださるのです」と教皇は説明している。
 「この長い入院期間を通して、私は主の辛抱強さを体験しました。それは医師や医療従事者の方々の飽くことのない心のこもったケアと、(同じく入院している)病者の方々のご家族による世話と希望にも表れているのだと私は思います」と教皇は続ける。
 「この信頼にあふれる忍耐は、決して裏切ることのない神の愛に根差していて、まさに私たちの人生に必要なことです。特に最も難しく苦しい状況に直面したときにはなおさらです」と教皇フランシスコは強調する。

 ガザの人道状況に緊急な対応求める

 さらに教皇は、これまで入院中の主日に発表されてきたメッセージでもそうだったように、平和のために祈りを呼びかけ、現在の国際情勢に言及している。
 「(パレスチナ)ガザへの苛烈な爆撃が再開したことに深い悲しみを覚えています。とても多くの死者と負傷者を出しているのです」と教皇は嘆いている。イスラエルはイスラム組織ハマスとの交渉が行き詰まったとして、3月18日にガザへの空爆を始め、1月から始まっていた一時停戦が終わってしまった。
 「私は即刻、武器の使用をやめることを求めます。そして、全ての人質の解放と最終的な停戦を実現するための対話を再開する勇気を求めます」と教皇は訴える。ガザでの人道状況は「またしても非常に深刻で、紛争当事者と国際社会による緊急な対応が求められます」。

 居室に戻っても2カ月間は安静

 教皇フランシスコの治療に当たってきた医師団を率いるセルジョ・アルフィエーリ医師は3月22日、記者団に対して、教皇は「聖マルタの家」の居室で鼻腔カニューレを通した酸素吸入を必要に応じて続ける予定で、真菌症などの感染症の治療と呼吸法や運動療法を含む呼吸器物理療法も続けると明らかにした。
 医師団は向こう2カ月間の安静と加療を教皇に指示していて、その間は大人数のグループとの面会はしないよう促している。教皇の発声の回復にも時間がかかるとしている。
 バチカン医局の副部長で、ジェメッリ総合病院で教皇を治療する医師団にも加わっていたルイジ・カルボーネ医師は、教皇の居室には酸素タンク以外に特別な医療機器を置く必要はないだろうとしている。ただ、バチカン医局には医師1人と医療スタッフが24時間体制で常駐していると付け加えた。
 教皇フランシスコがバチカンに戻ったことが発表されても、教皇と全ての病者のためのロザリオの祈りは毎晩、サンピエトロ広場で続けられる。

3月23日、ローマのジェメッリ総合病院から退院してバチカンに戻る直前に、病院前に集まった人々にあいさつする教皇フランシスコ(CNS)
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