農林水産省が2013年に設置を認めた「ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)」は、農地の上に支柱を立て、その上部に設置した太陽光パネルで発電をしながら農業を行う取り組みだ。事業者は農業と太陽光発電の両方から収入を得ることで、農業経営を持続的に安定させることができるメリットがある。
 本作品は、福島県二本松市でソーラーシェアリングに取り組む若き農業者たちのドキュメンタリー。小原浩靖監督は前作『原発をとめた裁判長 そして原発をとめる農家たち』(22年公開)で、関西電力大飯(おおい)原発の運転停止命令(14年)を下した福井地方裁判所の樋口英明・元裁判長の活動と原発事故後の福島でソーラーシェアリングに活路を見いだす農業者たちの奮闘を描いた。
 前作にも登場した農業者、近藤恵さん、農業高校の卒業後に近藤さんに導かれた塚田晴さん、新規就農者の菅野雄貴さんが所属する「二本松営農ソーラー&Sunshine」のソーラーシェアリングでは、福島県二本松市2万世帯に約5%の電力を供給している。ソーラーパネルの下の農地では、ブドウやイエローマスタード、エゴマなどを栽培するほか牧草だけで肉牛を育てる取り組みも。野生動物や害虫と戦い、工夫を重ねながら根気強く、そして「アトラクション」のように楽しんで農業に取り組む青年たちの四季が描かれている。

 同じく福島県内でソーラーシェアリングに取り組む齋藤広幸さんが、原発事故による耕作放棄地を復活させている事例も紹介されている。また、研究者による太陽光パネルのリサイクルについての解説や、樋口元裁判長が判決要旨を読み上げる場面も再現されている。
 教皇レオ14世は今年9月、カステルガンドルフォに「環境負荷ゼロ」の複合施設「ラウダート・シ村」を開設したが、それはバチカンが持続可能で循環生成型の経済の促進を重視していることの具体的なしるしではないだろうか(→関連記事)。
 本作品は脱原発実現のための一つの可能性と、将来への希望を示している。
 現在、全国で公開中。東京では11月21日(金)からMorc阿佐ヶ谷で上映開始。24日(月・祝)は樋口英明元裁判長と小原監督のトークが行われる。映画公式サイト https://hinata-movie.com/


 
	 
			 
			 
			 
			 
			