前教皇フランシスコの回勅『ラウダート・シ』が出されてから今年で10周年を迎える。その記念として、「エコロジカルな霊性」について考え、分かち合うシンポジウムが10月4日、福岡市のサン・スルピス会旧神学院で開かれた。会場とオンライン合わせて150人余りが参加した。この日は環境保護の守護聖人であるアッシジの聖フランシスコの記念日でもあり、シンポジウム後に被造物を大切にするための記念ミサがささげられた。
エコロジカルな霊性―和解を生きる
『ラウダート・シ』の翻訳に携わった瀬本正之神父(イエズス会)が導入講話として、「エコロジカルな霊性」とは、全てのものがつながり、影響し合っているという視点に基づき、神、自然、他者、自分との和解を生き(かかわりを正し、守り、耕し)つつ、秩序あるいのちの営みの実りである平和を分かち合う道であると説明した。
続けて3人のパネリストが「エコロジカルな霊性」へのアプローチを紹介。
福岡海星女子学院付属小学校校長の深井隆弘さんは、同校の環境教育の実践について話した。同校は「LSGs(ラウダート・シ・ゴールズ)・SDGsを見据えた主体的・対話的に学び行動する子どもの育成」を研究主題とし、①複数の教科を関連させた授業実践と、②子どもたちが互いに意見や思いを聴き合う活動に力を入れている。
①の例として3年生では、理科でダイズやホウセンカの育ち方を調べ、国語では教科書掲載の単元の一つ「すがたをかえる大豆」を読んでダイズが食品に加工されることを知り、総合的な学習の時間ではみそ作りを通して食物の大切さを考える授業が行われている。
②の聴き合い活動の目的は、話し手を大切にする態度を身に付けること、話し手の考えと自分の考えを比較することを通じて、自身の考えを見直すことだと深井さんは説明した。
岩根のぞみさん(熊本・菊池教会)は、子育てや日々の生活からの気付きによって、家庭での消費行動が変えられたことや、社会への働きかけにつながったことを紹介した。
日本の四季とその風景が好きだと言う岩根さんは、気候変動が季節に影響を与えていると感じ、自分の子どもたちに四季を残せないのではないかという罪悪感を持つようになった。そこで夫と話し合い、自分たちでできることから始めようと、コンポストでのたい肥作り、マイボトルやマイバッグの使用、自然由来の日用品を取り入れるなどの取り組みを始めた。
やがて環境問題を学び、政治にも興味を持つようになった。そして「一人の100歩より100人の一歩」という言葉と出合ってからは、「私の小さな一歩も大事な一歩」だと勇気をもらったという。「自分の身近な人にも話をして(環境問題への思いを分かち合い)、その100人に加わってもらえたらなと思うようになりました」
SNSでの発信もしている岩根さんは「問題解決のためには人間性を転換する必要があり、再生には長い時間がかかります。そのためにはエコロジカルな霊性が必要です」と訴えた。そして日々できる工夫を紹介し、「神様の福音を全ての人に伝えていけるように、日々のささやかな(行いの)積み重ねの中で生きていきたい」と話した。
フランコ・ソットコルノラ神父(真命山・諸宗教対話センター/聖ザべリオ宣教会)は、熊本の自然豊かな場所にある真命山・諸宗教対話センターが、祈りの家として、自然に神が宿るとする神道の霊性にも共鳴しながら歩んできたことを紹介した。
記念ミサの冒頭では、主司式した成井大介司教(ラウダート・シ部門担当司教/新潟教区)が、「『ラウダート・シ』が発行されて10年間、私たちが歩みを続けてきたこと、その歩みの一歩一歩を神が見守って、共に歩んでくれたことを感謝し、祝うミサにしたいと思います」と会衆に呼びかけた。
共同司式したヨゼフ・アベイヤ司教(福岡教区)は説教で、この日のシンポジウムでの提言を無駄にしたくないと強調し、「命の神秘の前で謙虚に、その感動を覚えて和解する。その恵みを祈らなければならないと思います」と話した。

深井隆弘さん、岩根のぞみさん。(写真提供・ラウダート・シ部門)