第49回日本カトリック映画賞授賞式 『侍タイムスリッパー』安田淳一監督が受賞

 第49回日本カトリック映画賞(主催=SIGNIS JAPAN〈シグニス ジャパン/カトリックメディア協議会〉)の授賞式と授賞作品の上映会が7月12日、日本教育会館一ツ橋ホール(東京・千代田区)で行われ、約700人が参加した。
 受賞作品は安田淳一監督の『侍タイムスリッパー』(授賞決定についての記事はこちら)。幕末の京の闇夜、長州藩士と刃(やいば)を交えた会津藩士の主人公・高坂(こうさか)新左衛門が、現代の時代劇撮影所にタイムスリップしてしまう。江戸幕府がとうの昔に滅んだことを知り、現代社会に戸惑う新左衛門。行く先々で「騒ぎ」を起こしながらも、新左衛門が周囲の人々に助けられ、受け入れられて、時代劇の「斬(き)られ役」として生きる道を選び取っていく姿を描いた作品だ。同作品は今年3月、第48回日本アカデミー賞でも最優秀賞に輝いた。
 授賞理由を述べたシグニスジャパン顧問司祭の晴佐久(はれさく)昌英神父(東京教区)が、「日本アカデミー賞よりも先に、私たちが選んだ(注:日本カトリック映画賞の選考発表は今年1月13日)んです」と話すと、会場からは笑いと拍手が湧き起こった。晴佐久神父は授賞理由をこう説明した。
 「(作品には)人の心の温かさ、強さ、素晴らしさ、(つまり)人間賛歌が描かれています。今一番足りないものを取り戻せる予感や希望が、この映画に秘められていることに感動しました。(今日、作品を楽しみに集まった)人のつながり、素晴らしさがこの会場で実現しているじゃないですか。この映画が私たちを結んでくれるのです」
 賞状と記念品を受け取った安田監督は、こみ上げるものをこらえながらも「僕はクリスチャンではありませんが、神父様から真実のある豊かなお言葉を頂いて本当に感激しています」と笑顔で感謝を口にした。そして作品の「主人公が困難な境遇に陥って、それでも人生を諦めることなく必死に毎日を過ごして、自分のできることを頑張って、新しく人生を豊かに歩み出すことが、もしかしたら(キリスト教の)神様の教えと似ているのかなと思います」と話した。

 見た人が元気をもらう映画づくり

 作品の上映後、安田監督と晴佐久神父の対談も行われ、撮影の裏話や苦労話が披露された。日本アカデミー賞では、本作品と2位の作品の得票差がわずか8票だったことに、会場から驚きの声が上がった。安田監督の「(見た人が)映画でもらった元気で苦しい現実と闘うような、そんな映画作りをしたい」という言葉に、晴佐久神父はすかさず「大賛成」と答えた。
 授賞式に参加した大谷啓輝(おおたに・ひろき)さん(29/浅草教会)は、「最後の(主人公と敵役の)真剣での立ち合いシーンが一番印象に残りました。ロングショット(広い範囲を遠くから撮影する手法)で、最初の間の取り方や緊迫感とかが素晴らしかったです」と感想を話した。
 同じく浅草教会の伊藤小梅さん(26)は、作品を見たのは今回が初めて。「一番(印象に残ったの)は、人のコミュニティーです。(寺の門前で倒れていた)主人公を、住職さんが受け入れてあげて、ご飯を食べさせてあげて、仕事の紹介もしてくれる。(一番弱い人が)排除されることがなく、みんなが受け入れてつながっていく、温かい映画だと思いました」

 『侍タイムスリッパー』は7月18日(金)午後9時から、日本テレビで地上波初放送が予定されている。

受賞した安田淳一監督
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