パロリン枢機卿が来日 万博「バチカンデー」に参加

 バチカンの外交政策を主導する教皇庁国務省長官のピエトロ・パロリン枢機卿は、大阪・関西万博の会場で6月29日に祝う「バチカンデー」の式典に合わせて来日し、来場者がバチカンの文化への理解を深めることなどを目的とする同式典に参加した。
 今回の万博でバチカン・パビリオンは、「美は希望をもたらす」をテーマに、イタリアの画家ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラバッジョ(1571~1610年)の傑作『キリストの埋葬』(バチカン美術館蔵)を展示している。
 式典で伊藤良孝万博担当大臣に続いてあいさつに立ったパロリン枢機卿は、80年以上前の日本とバチカンの正式な国交樹立以来、関係を強化してきた両国にとって、「平和、安定、そして軍備の無秩序な拡散を抑えるための共通の努力」は「優先事項」だと指摘。その上で、バチカン・パビリオンがテーマに掲げる「美」と「希望」は、両国が共有している価値観の中でも現在の世界情勢において特に重視しているものだと語り、「美」と「希望」について次のように話した。

壇上であいさつするピエトロ・パロリン枢機卿

 「カトリック信者にとってキリストは、神の美の最上の表現」であり「人々の心と魂に触れる『美』」、そして全人類に救いと再生の道を開いた「人類の希望」です。そのため、「美」と「希望」こそが、カトリック信者が全世界と共有したい価値観であり、「そこから全ての人々にとってのより良い未来が生まれると確信しています」。
 また、「美」は芸術的表現に限らず、連帯の取り組み、ボランティア活動や、和解と赦しのための選択から生まれる「社会的な美」も存在します。そして「聖パウロが私たちに思い起こさせているように、『希望は欺かない』〈ローマ5・5〉」のです。
 パロリン枢機卿は、相互が複雑に絡み合った現代世界にあって「希望は私たちに実現可能な善を見失わず、変化を信じ、全ての人にとってより公正な未来のために勇気をもって行動するよう促す」ものだと参加者に呼びかけた。
 式典では、西本智美氏の指揮でモーツァルトのミサ曲「戴冠式ミサ ハ長調K.317」が演奏された。演奏者は、ソリスト、オーケストラ奏者、そして長崎、広島などから参加した児童、学生も含む合唱団員ら総勢150人以上。演奏中、壇上のスクリーンにはバチカンの聖ペトロ大聖堂や庭園、新教皇レオ14世が今年5月の教皇選挙で選出された直後にローマ市と全世界に向けて祝福を送った「ウルビ・エト・オルビ」の場面など、バチカンにまつわる建物や風景の写真がスライドで映し出された。
 この日はローマの保護者である聖ペトロ・聖パウロ使徒の祭日に当たり、地元の大阪高松教区カテドラル聖マリア大聖堂(大阪市)では、夕刻からパロリン枢機卿主司式、前田万葉枢機卿(同教区)ら日本の司教団と司祭団の共同司式によるミサがささげられた。

演奏中、バチカン美術館での『キリストの埋葬』(写真左側)の展示風景もスライド上映された
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