世界の司教、「気候正義」を訴える 利益優先の「偽りの解決策」糾弾

【ローマ7月1日OSV】アジアやアフリカ、ラテンアメリカ・カリブ海の司教協議会連盟は全世界の指導者たちに向けて気候危機への対応を求め、共通善よりも利益を優先する「偽りの解決策」を糾弾している。
 「気候危機は喫緊の現実です」と司教たちが発表した文書は警告する。「単なる技術的な問題ではなく、生存と正義、尊厳と私たちが共に暮らす家のケアに関わる問題なのです」
 「気候正義と、共に暮らす家のための訴え―エコロジカルな回心、偽りの解決策に対する変革と抵抗」と題された文書は7月1日付の発表で、教皇庁広報局が主催した記者会見で公表された。
 34ページにもわたる長文の声明文は、今年11月10日から21日まで、ブラジル北部ベレンで開かれる「国連気候変動枠組み条約締約国会議」(COP〈コップ〉30)を控えて発表された。
 声明文の中で世界の司教たちは指摘する。地球温暖化を防止する必要性を「科学は明白」に示していて、その現象のために「グローバルサウス(主に南半球に位置する新興国・途上国)と将来の世代は既に悪影響を受けている」。
 「私たちは『グリーン資本主義』や技術万能主義、自然の商品化、搾取と不正義をもたらす採取主義を拒絶します」と司教たちは強調する。
 司教たちが拒絶する「偽りの解決策」の中には、「自然を金融の対象にしたり、商品化したりすること」がある。そのような温室効果ガス相殺の仕組みを声明文は非難し、「排出削減の負担を排出する側から被害を受ける側に不正に転嫁するものであり、いのちより利益を優先する行為」だと指弾する。
 そうした仕組みは「地球とそこに暮らす生物、人々からの搾取を永続させるだけで、気候危機の原因に取り組むものではない」。

 森林破壊をなくし、生態系を回復する
 
 さらに司教たちの声明文は、カトリック教会の「言葉にとどまらず」に「気候と自然に関するあらゆる決断において最も弱い立場に置かれている人々を守る」決意を表明する。
 「私たちはインテグラル(総合的)なエコロジーの教育に努め、連帯に基づく経済を促進します」と司教たちは宣言し、「グローバルサウス」諸国との連携を強める努力を続けて、設立された「気候正義監視機関」を通して気候変動会議「COP30」の結果を監視するとしている。
 「私たちは一致団結して気候危機に立ち向かうために、先進国と新興国・途上国の当事者の間の歴史的合同を提案します」と声明文は続ける。
 司教たちの声明文は具体的な行動を呼びかけ、世界の指導者に「パリ協定」の完全履行を求め、「利益より共通善を優先する」よう促している。
 さらに、意思決定を担う人々は「気候と自然に関する政策を人権に根差して推進し、2030年までに森林破壊をなくす目標を達成することで、水圏と陸域の生態系の回復を実現」しなくてはならないと強調する。
 教皇庁広報局が主催した記者会見で発言したのは、ラテンアメリカ司教会議(CELAM〈セラム〉)会長のジャイメ・シュペングラー枢機卿(ブラジル・ポルトアレグレ教区大司教)やアフリカ・マダガスカル司教協議会シンポジウム(SECAM〈セカム〉)会長のフリドラン・アンボンゴ・ベスング枢機卿(コンゴ民主共和国・キンシャサ教区大司教)らだった。

7月1日、バチカンで、世界各地の司教協議会連盟の会長たちと会見する教皇レオ14世(OSV News photo/Mario Tomassetti, Vatican Media)
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