エリック・グオ~第2回ショパン国際ピリオド楽器コンクール・ライヴ

ショパン(1810~49年)の名曲を演奏した2人のピアニストのアルバムを紹介する。一つ目は、『エリック・グオ~第2回ショパン国際ピリオド楽器コンクール・ライヴ』(品番XNIFCCD660)。
カナダ生まれのグオは昨年、同コンクールで第1位とマズルカ賞を受賞。このコンクールは、ポーランドの国家一大事業であり、国立ショパン研究所が取り組み続けた、ショパンの作品をショパンが生きた時代の古楽器などで演奏する「リアル・ショパン」プロジェクトである。
 今回のコンクールには35人のピアニストが、2週間にわたって「ショパン時代の響き」を奏でた。アルバムにはグオによるショパンの代表作「ピアノ協奏曲第1番」「3つのマズルカ」などが収録されている。
 グオはカナダのトロント王立音楽院でピアノを学び、幾つもの受賞歴を持っていたが、今回は念願の優勝となった。彼はコンクールで1842年製のプレイエルを見事に扱い、その音色の特質を引き出したのである。ショパンの伝記を読むなど、作曲の意図を忠実に再現できるように掘り下げたことにより、穏やかで繊細に演奏できたという。「ショパンの音楽には人類をより良い次元へと導く力があると信じている」とグオは語る。
 ポーランドに生まれたショパンは、ピアノの詩人と呼ばれ、独特の繊細さを持った人気作曲家で、ピアニストでもあり、ロマン派を代表する一人である。彼の音楽はその熱情的な深み、技術的な難易度、そして独特の旋律と和声の美で知られている。ポーランドの民族音楽と、フランスで生活した時期に受けたパリの文化との融合によって、39歳で亡くなるまで多くの名曲を誕生させた。
 もう一つのアルバムは、韓国で人気を誇るピアニスト、ノ・イェジンの『ショパン:24の練習曲』(品番XNCMK9015)。このエチュード(練習曲)は、重要な技法の数々が盛り込まれている。基本から高度なレベルの練習まで構成された「ピアノの教科書」ともいえる。練習曲でありながらも、深い音楽性を持つ独立した演奏曲でもある。
 数々の受賞歴を持つノ・イェジンの第3作となるこのアルバムは、まさにテクニックを超えて、感性や情熱の深層を意識した自信作といえる。彼女の優れた音楽性が発揮されたことによって、ショパンの難曲を高い完成度で表現し得たのである。
 演奏家は時代と時代をつなぐ伝承者であり、作曲者が音楽へ持ち込んだ魂や精神を受けて、さまざまな工夫や努力によって当時の演奏に近づけることができる美しき〝魔術師〟であるといえよう。このようにクラシック楽曲の良き魅力を演奏によって呼び起こし続けているのであろう。〈金大偉 アーティスト〉

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