教皇フランシスコ葬儀ミサ 「人々のただ中にある教皇」

【バチカン4月26日CNS】教皇フランシスコは「全ての人に開かれた心をもつ、民のただ中にある教皇でした」と4月26日、枢機卿団で首席枢機卿を務めるジョバンニ・バッティスタ・レ枢機卿は、21日に88歳で逝去した教皇の葬儀ミサを司式する中で指摘した。
 バチカンのサンピエトロ広場でささげられた葬儀ミサに参加した約25万の人々は、ミサの祭壇前に教皇フランシスコのひつぎが運ばれるのを見守った。
 教皇フランシスコのひつぎはミサ後にパパモービレ(教皇専用車)でローマ市内の聖マリア大聖堂へ運ばれ、埋葬された。ひつぎを運ぶ車列は、教皇が2013年3月13日の選出以来、司教を務めてきたローマの中心部を通った。
 当日のバチカン周辺の警備は厳重で、それは多数の葬儀ミサ参列者が見込まれるだけでなく、特に80カ国以上の国家元首や政府指導者、公式代表団が訪れるからだった。
 参列者の中には、教皇フランシスコが使徒宮殿の中に設けた避難所で暮らすホームレスの人や教皇自身が2016年にギリシャ・レスボス島の難民キャンプから連れ帰ったシリア難民12人もいた。
 葬儀ミサで読まれた福音箇所(ヨハネ21・15〜19)で、復活したイエスはペトロに「わたしを愛しているか」と問いかけ、ペトロが「はい」と答えると、イエスは「わたしの羊を飼いなさい」と命じる。
 「教皇フランシスコは、その最後の脆弱(ぜいじゃく)さと苦しみにもかかわらず、地上の生涯の最後の日まで、この自分をささげる道を歩むことを選びました」とレ枢機卿はミサ説教で強調する。「彼は、良い牧者である自分の主の足跡に従いました。主は、ご自分のいのちを与えるほどに、ご自分の羊を愛されたからです」
 91歳のレ枢機卿は会衆に向けて、こうした教皇フランシスコの姿は「私たちの記憶に刻まれ続けるでしょう」と語りかけ、逝去の前日に聖ペトロ大聖堂の中央バルコニーに現れて復活祭の祝福を送り、その後にもパパモービレに乗ってサンピエトロ広場に集まった人々の間を巡ったことを振り返った。
 「教皇の地上から永遠のいのちへの旅立ちの後に私たちが目にした、人々の感動と参加のあふれるような表明は、教皇の深い教皇職がどれだけ人々の精神と心を打ったかを物語ります」と同枢機卿は指摘する。バチカンの推計によると、4月23日から25日まで教皇の遺体が安置されていた聖ペトロ大聖堂内には、多くの人は3時間から4時間も列で並んだ25万人か弔問に訪れたという。

4月26日、バチカンのサンピエトロ広場でささげられた教皇フランシスコの葬儀ミサに参加するために
広場と周辺の通りに集まった約20万の人々(CNS Photo/Cristian Gennari, pool)
 平和を訴え続けて全ての人を癒やす

 教皇の教会内での司牧奉仕を導いたのは、「教会が全ての人のための家だという確信でした。教会は常に扉が開かれた家です」とレ枢機卿は続ける。
 教皇フランシスコにとって、教会は「野戦病院」だったとレ枢機卿は振り返り、「教会は、信条や状況を問わず、全ての人に身をかがめ、その傷を癒やさなければなりません」と強調する。
 米国のドナルド・トランプ大統領やウクライナのウォロディミール・ゼレンスキー大統領、ロシアのオルガ・リュビモワ文化相が祭壇近くに着席している中で、レ枢機卿は指摘する。「最近数年間の多くの戦争の勃発と、非人道的な恐怖と数え切れない死と破壊を前にして、教皇フランシスコは、平和を願い、可能な解決を見いだすために理性と誠実な交渉へと人々を招くために絶えず声を上げました」
 「教皇は何度も『壁を作るのではなく、橋を架けること』を呼びかけました。そして、使徒ペトロの後継者としての信仰への奉仕は、あらゆる次元における人類への奉仕と常に結び付いていました」と同枢機卿は付け加えた。
 レ枢機卿はさらに、教皇フランシスコが絶えず移住者と難民に寄せていた強い関心を思い起こし、就任後最初の使徒的訪問は、イタリア南部のランペドゥーサ島で、地中海で溺れ死んだ移住者たちのために祈ったことから始まり、16年にはレスボス島を訪れ、米国とメキシコの国境でミサをささげたことを挙げた。

「共に歩む教会」が教えの実現に必要

 葬儀ミサに参加した米東部ニュージャージー州ニューアーク教区大司教のジョゼフ・トービン枢機卿は、教皇フランシスコが残した貴重な遺産は、「共に歩む教会」となるよう呼びかけたことだったと指摘する。そこでは、全ての信者が教会の使命遂行への責任を担い、互いと聖霊の促しに耳を傾ける。
 「そうした教会の実現が、教皇のその他の預言的な教えの結実に本当に必要なのです」とトービン枢機卿は続ける。
 「シノドス的な(共に歩む)教会になれなければ」、教皇フランシスコが教えた環境保護や対話、人類のきょうだい愛だけでなく、福音の喜びを分かち合うことさえも難しくなると同枢機卿は付け加えた。

4月26日、葬儀ミサ後に聖ペトロ大聖堂内を運ばれる
教皇フランシスコのひつぎの横に並ぶ枢機卿たち(OSV News photo/Vatican Media)
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